「藤本 彩です。」
「彩ちゃんかあ、可愛い名前!
ってその制服、大和と同じだわ!
ねえ彩ちゃん、西村 大和って知ってる?」
「はい、そりゃ学校一のモテ男ですし。」
「へー、大和ったら学校一のモテ男だったのね。
なんかむかつくー!」
そう言って笑う奈美さん。
奈美さんはいい人だ。
もし私が男だったら惚れていた。絶対。
だから不安。西村君が奈美さんを好きにならないかどうか。
私、奈美さんに勝てる自信ないよ…。
私は唇を強く噛み、俯く。
すると奈美さんは不思議そうに
「彩ちゃん、泣きそうな顔してる。
どうしたの?」
「どうもしてません!
では、私、宿題多いので! じゃあ!」
そう言って走り出す私。
宿題多いなんて嘘。
これ以上奈美さんと一緒にいたくなかった。
こんな女子力の高い女の人に勝てない。
そう思っていると涙が出そうになった。
だから逃げた。嘘ついて。
奈美さんは何か言いたげだったけど気づかないふりをした。

