日本暗殺

「紹介する。俺の彼女だ」


冗談めいた響きを残して、希里斗が言った


高まる不安と恐怖の中で、私は立ち尽くしたまま動けない



少なくとも次の言葉を聞くまでは


「まさかこの状況下で、呑気に彼女を紹介する奴がいるとは思わなかったよ」


不思議だった


笑って言ったその男の言葉で、はりつめていた空気が一瞬にして和んでいくのを感じた


「よろしく、優里奈」


突然の呼び捨てに少し面食らったが、その男の笑顔につられ、私の頬も自然と緩んでいく



私が希里斗を尾行し、初めて訪れた時の雰囲気とはまるで違う


この場所に集った私の眼前にいる若い男達5人は皆、笑っていた


蛍光灯の光に照らされた部屋の中も、思っていたより明るい



想像と現実とのギャップが、極限にまで高まっていた私の緊張を、いくらかほぐし始めてくれていた