日本暗殺


地下には吹き抜ける風もなく、ジメジメと重たい空気が私達を包んでいた


階段を下り、部屋の扉の前で、私は天井を仰ぎ、一考する時間を得ようと、気持ちを落ち着かせようと試みた


でも希里斗はそんな私に気がつくことなく、扉を五回ノックする


私の試みは一瞬にしてかき消される


変則的なリズムを刻んだノックの音が、暗号か、何かの合図であることも明らかだった


カチッと中から開けられた鍵の音が、不思議なほど大きく辺りに響く


私は小さく二度、深呼吸をして肺に空気を送りこみ、少しでも心の動揺が収まることを期待した




次の瞬間、私に振り向いた希里斗が、躊躇うことなく、その扉を開けた