(日向、遅いな)


俺は学食の空いている席に座りながら、ため息をついた。


目の前には、日向が昨日の夜に作りおきしていた、手作り弁当が置いてある。


前までは学食で買って食べてたんだけど、お金がもったいないと、最近日向が作ってくれているのだ。


学食は弁当持ち込みオッケーだから、俺と日向はいつも弁当を持ってここで食べている。


のに。


今日はいつまでたっても日向が来ない。


何かあったんだろうか?


(もしかして…)


月下風也…とか?


昨日、付き合うことになったとか言ってたし、月下風也と一緒にいるのかもしれない。


くそっなんかイライラしてきた。


どんなことがあったって、俺が入学してから今までは、ずっと俺が日向と食べてたのに。


そんなことを考えていると。


「あの~ここ座っていいですか?」


一人の女子が俺の隣の席を指差す。


猫なで声の、やけに目がうるうるしてる女だ。


「あー…どーぞ」


俺は一言、返事を返した。

「えー。ずるいーじゃぁ私もここ座るー」


「私もー」


それからその女を筆頭に、次から次へと俺の周りの席へ移動してくる女子たち。

…他にも席はいくらでもあるのに。何で、もといた席からわざわざ移動してくるんだよ?


そう思ったが口には出さず、俺は口を紡いだ。


けどそのうち、一人の女が俺の向かい側のイスに手をかけた。


俺と同じ一年の、確か学年一可愛いと評判の女、澄川鮎(すみかわ あゆ)だ。


「そこはだめ」


「え?」


澄川は目を丸くして俺をみた。


「そこは日向の席だから、そこはだめ」


日向が例え来なかったとしても、そこは日向の席だ。

「あっ…そうだよね、気づかなくてごめんなさい。」

澄川はやたらと上目遣いで俺を見上げて謝った。


「でもね?太陽君かっこいいし…あんなお姉さんと一緒にいたらもったいないよ?」


…は?


あんな?今この女日向のこと、あんなっつった?


「それにー…私、そんなお弁当よりもっと可愛いお弁当作れるよ??明日から私と一緒に食べようよ♪」


淡々と笑顔でしゃべり続ける澄川。


誰がお前なんかとー…


そう口を開きかけたとき。