小さく女の悲鳴が聞こえた。


どうやらラーメンの汁が手に飛んだらしい。


女は涙目で手の甲を押さえている。


…気を付けろと言った瞬間、ケガするなんて。


俺の女へのー…今で言う日向への第一印象は、“バカな女”だった。


さらに問題なのが次の瞬間。


ガタッと席をたった太陽は、日向の指を自分の口元に持っていき、そのまま指を加えた。


「!?」


その様子を横目でちらりと見ていた俺は、あまりの衝撃に一瞬口に入れていたカレーを、吐き出しそうになった。


「きゃーーーっっ」


そして同じくその様子を見ていたとされる女子の悲鳴が学食中に響き渡った。


しかし本人たちは、そんなこと気にも留めず、二人の世界へ突入している。


「このドジ。だから冷まして食えって言ったのに」


「えへへ。でも早く食べたかったんだもん。太陽も食べる?」


そしてあろうことか日向が太陽に「あーん」と自分の箸を持っていく。


太陽はそれを一瞬のためらいもなくぱくっと一口。


実際は二人は姉弟。


でも、端から見たらどこからどう見てもバカップルにしか見えなかった。


そして俺は確信した。


(こいつら極度のシスコンとブラコンだ)


と。