「風也君が辛いでしょ?」

ー…そんなこと初めて言われた。


俺が顔を上げると、宮本日向と視線が重なった。


真っ直ぐに、けして目をそらそうとしない宮本日向。

「風也君が風也君を認めてあげなきゃ、本当の風也君はどこにいっちゃうの!?」


本当だ。


どこへいくんだろう。


宮本日向に言われて、初めて気づいた。


…そんなん存在しないのと一緒だよな。


「…でもお前だって、優しくて完璧な風也が好きで付き合ったんだろ?それにどうせ顔だろ」


もしそうなら、きっと幻滅してるはず。


だって思ってたのと180度真逆の奴だったんだもんな。


だけど宮本日向は「今から好きになればいいじゃん!」と言った。


は?


「確かに勉強もスポーツも完璧な風也君が好き!ちなみに顔も好き!もともと一目惚れだし!」


ビックリした。


まさかそこまでぶっちゃけられるとは思ってなかったから。


「ほらー…」


結局は外面じゃねぇか。


そう言おうとしたとき。


「でも!」宮本日向の声と重なった。


「でもそれはっ本当の風也君を知らなかったからでっでも今知ったでしょ?だから少しずつでも風也君を知っていけばいいと思う!」

「それに風也君、私の弟に似てるんだよね」


えっ。


「…弟って、宮本太陽?」

俺がぽつりと聞くと。


「知ってるの?」


キョトンと目を丸くして、今度は聞き返してきた。


「知ってるもなにも」


思わず苦笑の声か出てしまった。