しばらく廊下を走って、ふいに瞬君が足を止めた。


「しゅ…しゅしゅしゅ、瞬君??」


運動が死んでも得意とは言えない私。


はぁはぁと息を整えながら、瞬君の顔を見上げた。


私が瞬君に手を引かれて来たのは、廊下を更に突き進んだ奥の場所。


薄暗くて、人気なんて全くないところ。


…ん?


目の前の男の子は学年1のチャラ男。


加えて薄暗くて、人気がない場所。


ま…ままままままさか!?

私の頭の中に、ある予感が生まれた。


(い、いやいやいや。まさかね…あはっあはは)


「日向ちゃん…」


びくっ


ふいに名前を呼ばれ、一瞬肩が震えた。


瞬君は私を黙って見つめたまま、一歩一歩近寄ってくる。


(ま、ままままままさか!)

内心心臓ばっくばく。


違う違うと自分に言い聞かせながら、私は一歩一歩後退りする。


歩み寄ってくるイケメンと

後退りする平凡女。


はたから見たら、何やってんだと言われる光景だと思う。


それでも近づいてくる瞬君。


その瞬間、背中に固い感触があたった。


あ。終わった。


瞬間的に私はそう思った。

何と私の後ろは壁だった。

(あ…はは)


笑い事じゃないぞ。これは。


逃げ場がない私に、どんどん詰め寄ってくる瞬君。


トンっと私の顔の真横に、瞬君の腕が置かれた。


こ…これが世に言う壁ドンですか!?


瞬君が真っ直ぐに私の目をとらえる。


私は頬がだんだん火照っていくのが分かった。


「しゅ…瞬くん…やだぁ…」


いやっこんなイケメンに攻められたら嬉しいけど…いやいやいやっ全く嬉しくない!!しっかりしろ宮本日向!風也君がいるしっ付き合って1日目で浮気なんてだめよ!日向!!


「日向ちゃん…俺…」


瞬君の顔が近くなる。


息づかいが聞こえる。


私は反射的にぎゅっと目を紡いだ。