「日向ちゃん♪お昼は俺と風也と食べよーよ♪♪」


茶髪の男の子にそう誘われたのは、四時間目が終わった後の昼休みだった。


超絶イケメンがお弁当の包みを持って、私の席の前に立っている。


(確か…)


同じクラスの早乙女瞬(さおとめ しゅん)君。


いつも風也君と一緒にいて、学年1チャラいと評判の人だ。


なるほど。この会話に“♪”をつけたり、あまり親しくもないのに名前をちゃん付けで呼んだりするあたり、正真正銘のチャラ男だろう。


そんなことより…。


(ナイスです!瞬君!!←自分はちゃっかり名前呼び(笑))


私は心の中で拝んだ。


実は、風也君と朝に挨拶をして以来(交わしてはいないけど)昼休みまでの今まで、一言も話せていなかったのだ。


だって?放課は女の子たちが風也君や瞬君の周りに群がってるし?


私が頑張って風也君に近づこうとすると、女の子たちにめっちゃ怖い顔で睨まれるし。


話すタイミングを見計らっていたところに、ちょうど瞬君が声をかけてくれた。

私は鞄からお弁当を取り出して、キョロキョロと辺りを見回した。


あれ?風也君がいない…。

教室中を探しても、どこにも風也君がいない。


不思議に思い、瞬君に視線を向けると、瞬君はクラスの女の子たちに囲まれていた。


「瞬ーお弁当一緒に食べようよー」


「そーだよー?いっつもお昼になるとどっか行っちゃうじゃん?どこいってんのー?」


あっという間に女子の軍団ができる瞬君の周り。


おさまりそうもないし、風也君もいないし、やっぱりお昼は太陽と食べようかな…なんて思ってその場を離れようとすると。


「日向ちゃん、走って!!」


え?


後ろから名前を呼ばれ、思わず振り返った。


「きゃっ!?」


でも次の瞬間、私はぐいっと強い力に腕を引かれた。