…イライラする。


朝。朝飯を食べていると、リビングに日向が入ってきた。


頬は緩み、口元はにやついている。


「きっも」


俺は日向に聞こえるようにわざと声を大きくした。


案の定日向はテーブルに着いて、何か言いたげに俺を見つめている。


まぁ、そりゃそうだろう。会っていきなり言われた言葉が“おはよう”ではなく、“きっも”なんだから。

「ニヤニヤしやがって」 

皮肉も込めてそう言った。

俺は呆然としている日向を横目に、食べ終わって空になった皿と、お茶が入っている飲みかけのコップとを同時に手に持ち、キッチンへ向かおうとした。がー…

次の日向の言葉によって、俺は足を止めることになった。


「昨日から機嫌悪くない?」


ガシャンッ


足元に、持っていたコップが落ち、破片が飛び散った。


日向は驚いたように目を見開いて砕け散った破片を見ている。


機嫌?悪かったか、俺?


そういえば朝からずっとイライラしてた。


だけど。


思い当たる節と言えば、あれしかない。


うん、きっとあれだな。


うん。そうだ。


でも俺はそれを否定するように首をふった。


別に日向が誰と付き合おうが俺には関係ないし?


そのことで機嫌なんて悪くなってねぇし?


でもそんな否定も虚しく、否定すればするほど、肯定しているように思えてきた。