そっかぁ…二人ともお仕事なんだ。


会社を経営しているお父さんに、その秘書をやっているお母さん。


二人は私と太陽が幼い頃から多忙で、会社に泊まり込みをすることとか、家を空けることが多かった。


寂しいけど…仕方ないよね。


「…俺がいるから」


ふいに頭の上に手のひらの感触が伝わった。


へ?


顔を上げると、そこには私の頭の上に手のひらを乗っけている太陽がいた。


「だからっ父さんとかいなくても。お前が月下風也にフラれようが、俺がいてやるっつってんの。感謝しろよな」


太陽…


「…ありがとう」


嬉しいけど…お姉ちゃんはフラれないぞ??


そこは訂正しようね、太陽?


「…っべ!日向遅刻!!」

ほぇ?


突然の太陽の焦った声につられ、私は壁にかけられた時計に目を移した。


時計の針は7時45分を指していた。


始業チャイムは8時ぴったし。


家から学校までの距離15分。


「やっば!遅刻しちゃう!!」


しかしこのあと。


罵声を飛ばしている太陽を無視して、私は急いで残りのご飯を口に詰め込み、案の定喉につまらせ、更にイライラしている太陽に一発鉄拳をくらい、涙目のままあわてて家を出たことは、言うまでもない。