朝起きて。


ベッドから降りて髪にブラシを通して、着なれた制服に着がえて。


いつも通りのことなのに、そんなことも特別に思える。


「ふふっ」


いけないいけない。


思わず頬がゆるんでしまった。


昨日の夜。


部屋へ戻ってきた私のケータイに、メールが届いていた。


送信者は…なんと風也君!!


【うん、こちらこそよろしくね。実は宮本さんのこと前から気になってたから、付き合えて嬉しいよ。おやすみ】


って。


メールでも丁寧な風也君。

そんなメールが私は風也君の彼女になれたんだって実感できて、嬉しくて。


昨日の夜、私はケータイを握りしめながら眠った。


「きっも」


朝ごはんを食べにリビングへ降りてきた私に、太陽が言った。


太陽はテーブルに座って、朝食の目玉焼きを口に運んでいた。


きっも!?


実の姉に向かって、しかも第一声がそれ!?


「おはよう」ではなく「きっも」!?


姉ちゃん泣いちゃうよ!?

「ニヤニヤしやがって」


私がテーブルに着くと、太陽は怪訝そうに顔をしかめた。


「何か昨日から機嫌悪くない?」


私は目玉焼きに醤油をかけながら、何気なく聞いた。

本当に何気なく聞いただけだった。


てっきり「うざ。」って返ってくると思っていたのに。


ガシャンッ


と何かが割れたような、そんな音がリビングに響き渡った。


私はあわてて音がした方に顔を向けた。


な、ななな、何事??


そこには、食べ終わったあとのお皿を持って立ち尽くしている太陽がいた。


太陽の足元には砕け散ったガラスの破片が落ちている。


コップを落としたんだろう。


それにしてもかなり動揺している様子。


「別にっ機嫌なんて悪くねぇしっ…日向が誰と付き合おうが…」


とかなんとかぶつぶつ言っている。


「何やってんの。もー片付けてあげるから、掃除機持ってきて」


私がそう言って立ち上がろうとすると。


「これくらい自分で片付けれる」


太陽に止められた。


「えー?でも、危ないよ?手、怪我しても危ないし。」


「いいから!日向はさっさと学校行けよ。…愛しの月下風也様が待ってんだろ」

太陽は拗ねたようにそう言い残すと掃除機を取りに行こうと、足を踏み出した。

が。すぐにピタリと足を止め、私をじろりと見下ろした。


「母さんも父さんも、しばらく会社に泊まり込みだと。朝電話があった」


「あっ…うん」