(さーて、面白いことになってきた♪)


屋上を出ていく風也の背中を見つめながら、俺は不適ににやついた。


だってこんな楽しいことがあっていいと思う?


答え:ない


でしょ?


そんな自問自答をしてから、ゴロンと地面に寝転がる。


(…でもなぁ)


もちろん、俺だって考えもなしに賭けを思い付いたんじゃない。


風也がいつまでも“過去”にこだわっているからだ。

風也は自分が完璧でないといけないと思ってる。


そんなことないのに。


俺は女の子大好きだし、遊んでばっかりいるけど。


それは本当はいけないことなんだろうけど!


でも、何て言うか…


(求められてる時って、いいんだよな。)


いやっ決して変な意味ではなくてっっ


ただ、“好き”とかって、愛情表現してもらえるとさ、ありのままの自分を認めてもらえてるって思えるじゃん?


受け入れてもらえるのって、いいんだよな。


だから、もしかしたら風也も変わるかもしれない。


たった1ヶ月でも、女の子と付き合ってその子のことを本気で好きになって。


その子からも求めてもらえたらさ、風也も変わるかもしれないだろ?


今の嘘くさい作り笑顔なんかじゃなくてさ、マジに笑えるようになんだろ?


しかも、その子が風也の本性を知った上で、受け入れてくれたらー…


風也だってもう“過去”にこだわらなくてよくなる。

そこで選んだやつは、宮本日向だ。


いつも隠れてちらちらと風也に視線を向けている女の子。


気づいてないつもりなのかも知んないけど、丸わかり。


気づいてないのなんかよほど鈍感なやつか、風也ぐらいだ。


とはいえ、俺があのこを選んだ選考基準は単純。


可愛いから。


この賭けが終わって風也が宮本日向を好きんなってなかったら、俺がもらっちゃいたいくらい。