「さっきからずっと呼んでんのによー」


瞬はそう言って唇をとがらせ、俺を見つめる。


が、しばらくすると「そんなことより」と話題を変え始めた。


そんなことってなんだよ?

俺なんも言ってねぇし?


お前が勝手にしゃべってただけだろ。


内心そう思ったが、口には出さない。


何でかって?


答えは簡単、めんどくさいことになるから。


「賭け!ウソ告のー…ぶぼっ!?!?」


俺は自分でも驚くほどの反射神経で、瞬の口をふさいだ。


そして瞬の耳元でぼそっと一言。


「黙れ」


その一言で、不穏な空気を感じたのか、涙目になった瞬がこくこくと何度も頷いた。


俺は不思議そうにこっちを見ているクラスメートに、にこりと笑顔を向けて、足早に教室を出た。