「…ごめんね」


ふいに遠くで日向の囁く声が聞こえた。





「ん…」


俺は上半身を起き上がらせて、重たいまぶたをごしごしとこすった。


ソファーに倒れ込んでから、いつの間にか眠ってたんだ。


しんと静まり返ったリビング。


ケータイで時刻を確認すると午前3時。


この時間だから、母さんも父さんも帰ってきてるはず。寝室で休んでいるんだろう。


ふぁーと俺は大きくあくびをした。


懐かしい夢を…見た気がする。


具体的にはよく覚えてないけど、うろ覚えに。


日向が泣いていたときのこと。


日向はいつも笑ってて、辛いときでも自分がどんなに苦しくても、弱音を吐いたりしない。


でも一度だけ。


過去一度だけ、日向は声を上げて泣きじゃくったことがあった。