「えっ、良くん、どうしたの?」

上条先生が心配そうに声をかけてくる。

「すみません…ちょっと、休ませて下さい。」

「どうぞ、どうぞ。ゆっくりするといいよ。芽衣さん、ちょっと様子見ててね。飲み物取ってくるから。」

そうして、音楽室を出ていく上条先生。

「大丈夫?家どこ?」

一人で帰すととんでもないことになりそうなので聞いてみた。

「親は、隣町。俺は下宿してるよ。」
私と同じ人がいた。

「一緒だ。下宿先は?私は待野さんの家だけど。」

「一緒だよ…一緒に帰ってくれる?」

もちろんだと言った。断る理由がないから。それに、男子と話したことが無かった私に声をかけてくれた良くんの気持ちが嬉しかった。

「大丈夫?」

上条先生が帰ってきた。

「今日、帰りは?良くん、自分で帰れそう?」

いや、無理でしょうよ。先生。実は天然ですか?

「じゃあ、先生が送っていくよ。芽衣さんも一緒に帰ろうか。一緒のところだったよね?」

ということで、先生が送ってくれることになった。