長年、人が住んでいなかったにも関わらず、その家はある程度綺麗にされていた。


桜は、祖母が亡くなった後、会った事もない親戚に囲まれ、相談された上、施設へと預けられる事になった。

この決定に、桜は少しホッとしていた。
いずれ施設を出て、祖母と暮らしたあの家に帰れる希望になったからだ。

施設の皆は、優しく桜を迎えいれてくれたが、どうにも気を使ってしまい、いわれぬ淋しさをぬぐいきることは、できなかった。

それでも、いつか祖母と暮らしたあの家に戻るんだ!と、その希望だけが、桜をなんとか奮い立たせていた。

そしてやっと、中学も卒業し、義務教育も終わり、晴れて桜は1人暮らしをすることが出来るようになった。
祖母は、桜の為に沢山貯金をしてくれており、今の所はお金に不自由することもない。
親戚は、桜が1人で暮らす事に、特に気にかける様子もなかった。


誰も自分の事を思ってくれない淋しさはあったが、何よりも祖母が残してくれたあの家に帰れる高揚感には、勝てない。



中学生の頃、連休があったりすると、桜は祖母と暮らしていたあの家に戻り、こまめに掃除をしていたのだ。
その為、家に入ったときも汚れている感じはほとんどなかった。





桜が、窓を開け放つと、家が生き返ったように暖かくなった気がした。


「さてと!念入りに掃除しなくちゃね!」


桜は、鞄の中から祖母の遺影を棚に飾り、気合いをいれて、掃除機をセットした。