その男は、柔らかい茶色の髪をしていて、印象は犬のようで、とにかく人懐こい顔をしている。
可愛い顔だが、キリッとした男らしい感じもある。
かっこ可愛い感じ……
桜がじろじろと男を見るので、恥ずかしそうに、男はたじろぐ。
「なっ、何?
あんま見られると、恥ずかしいんだけど…」
「あ!
ごっ、ごめんなさい!」
「いや、別に…」
照れて軽く横を向くその顔は、やっぱり可愛い。
「あ、あの…。
私、どうしたんでしょうか…。
それで、あなたは誰…ですか?」
人を緊張させない、その男に桜は尋ねた。
「え⁈
桜、何も覚えてねぇの⁈
マジで⁈」
男はあぐらをかいたまま、驚いて少し身を乗り出した。
「ごっ、ごめんなさい!
なんか、途中までは覚えてるんですけど、頭がぼーっとして!」
「俺、炎だよ!炎!
さっき、会ったばっかりだろ!」
炎という男は、桜に近づいて来た。
なんだか凄く必死で、桜も近づかれても何か言うのを忘れていた。
「さっきは、手のひらサイズの狐だったけど!
管狐だよ、俺!」
がしっと、両腕を掴まれる。
…くだ…管狐?
…………
おばあちゃんの部屋で見つけた変な筒…
5つの狐のぬいぐるみ…
………
あ…
「あーーーーーーーーーーーーーー‼︎
思い出した!
管狐!
そうだ、私さっき夢で…」
「夢じゃねぇって!
存在してるだろうが!
今、ここに!」
片方の手は、桜の腕を掴んだまま、炎は空いてる方の手で、自分を指差す。
「桜、泣き出して、あんまり泣くから、次郎さんが眠れるように、まじないかけたんだよ!
それから、ずっと寝てたけど、もう日も暮れてくるし、起こしに来たんだよ!」
「夢じゃない?
じゃあ、管狐の話は本当だったんだ…」
よく眠ったからなのか、なんだか落ち着いてきたようだ。
「私、あんなに泣いて………」
次郎とよばれた管狐に、ずっと手をさすってもらっていたら、なんだかとても眠くなったのだ。