優しく風が頬をなでる。



涙で濡れた肌を優しく乾かすように

まるで、昔のようにおばあちゃんが優しく頬を撫でてくれているように



春の風は、優しくて、気持ちが良くて、ずっとずっと眠っていたかった。
眠っている間だけは、不安にはならなかったから。



本当は、1人で生きていくことの心細さに押しつぶされそうだった。


だから、眠っていたい……












「…おい」


遠い所で声がした。


やめて、起こさないで…
ずっと眠ってたいんだから


「おい。
もういい加減起きろ」


…………


「……………………っ」



ぱしんっ と頭を軽く叩かれる。


「痛っ⁈」


桜は軽い痛みに驚いて、目を開けた。