「おい」
「え」
ケーキの並ぶショーケースにぴったり張り付いてる私に、イケメンが困ったように笑った。
「変な勘違いだけは起こすなよ?俺は女しかいけないから」
「あら、どういう意味よ」
「...あ、はい」
引きつりながら答えると、やっぱりかと言ってイケメンが苦笑いを浮かべる。
この人は店長の元カレ?ではないらしい。
「恭ちゃん、どうしてこっちに?」
「ああ。まぁ色々あって引っ越してきた」
「そうなの。お疲れ様」
遠くから見ると本当に夫婦みたいだ。
一瞬、店長がイケメンを見る目が少し悲しそうに揺れた。
気がする。気のせいかも。
あ!と急にひらめいたように笑う店長がイケメンから離れる。
「恭ちゃん、引越し1人で大変でしょ?」
「いや、別に」
「この子貸してあげる!」
「えっ」
突然腕を引っ張られて店長に激突する。
訳の分からないまま店長の顔を見上げた。
貸してあげる、って?
