「お一人様..です..か」
紺色のスーツを着こなしたイケメンに目を奪われる。
久しぶりに見たな、こんなに整った顔。
黒髪、黒縁、長身。
あなた、どこかの少女漫画から飛び出してきちゃったのですか?
「?...なんだよ」
「あ、いえ、すいません」
私の視線に気が付いたのか、チラリと一瞬私を見てから、席に座る様子も無くキョロキョロと店内を見回しはじめた。
なんか、ちょっと怪しいんだけど。
「あの...?」
「ミツ...いや、柴田さん。いる?」
「春子ちゃーん!お客さん?」
グッドタイミングで店の奥からヒョコッと顔を出した店長が、黒縁イケメンを見つけると、小さく首を傾げた。
「あれ?あなたどこかで?」
「初恋の人の顔忘れんじゃねーよ、ミツ」
は?!初恋?!!
ニヤリと笑ったイケメンを見て思わず後退りをする私。
え?今確かに初恋って言ったよね?
店長をチラッと横目で見ると、キラキラと瞳が輝いていた。
....まじ?
「えー!恭ちゃん!?」
「はっ、変わんねーな」
「やだー!え?いつぶり?ちょっとまたイケメンになってー!」
「顔は変わってねーよ」
なんだこのやりとり。
なんだこの二人。
きゃっきゃ言いながらイケメンに飛びつく三十路店長。
乙女か。
「おい、引かれてんぞ」
「え?あら本当ー!春子ちゃん、口!開きっぱなしよー!」
開いた口も塞がりません。
腕にしがみつく店長を嫌がる様子もなく普通に会話してるし。
てか、超仲良くない?山本さんより仲良さそう。
...!
まさか
まさか、元カレ、とか?
