「オマタセシマシタ」


いつも通り嫌味な位棒読みで、乱暴に奴のテーブルにコーヒーを置く。

「ありがと春子ちゃん」

なにも疑う様子なくカップを手にする悪魔。
滅べ!悪魔!

何食わぬ顔で定位置に戻ると、カランコロンと扉のベルが鳴った。


「いらっしゃいませ」

トレンチコートを着た30代位の女性に、めいっぱいの営業スマイルを向ける。

もう数少ないケーキを見つめる女性に、この春オススメのハニームースを押してみる。



「ゴホッ、」

そんな時、窓際のテーブルから苦しそうにむせる咳が聞こえてチラリと目線をむける。

参ったか悪魔め。
これがハチミツたっぷりコーヒーの偉力だ!


「このムースとシュークリーム下さい」

「かしこまりました」

してやったりな私はいつもより声を弾ませながら接客する。

奴の視線を感じながらもしらんぷり。

気付かないフリをしながらケーキ箱にケーキを詰める。



気持ちはルンルン。
でも窓際からは軽い殺気を感じる。

そういえば。

私の仕返しが奴の悪魔心をさらに向上させてしまう事はあんまり考えて無かったような。