全ての荷物を運び終えた私達は、2人して奴の部屋に倒れこんだ。
体中が痛い。
てか、これで1日1000円とか、あり得ないから。
てか、ありがとう とか、言われてないんだけど。
こんだけ散々使われて礼の一つも無いのか、クソ悪魔。
「春子」
「なに」
「ふはっ、声低」
うるさい、昔からよく言われるわ。
容姿と声のギャップが激しいとかね。余計なお世話だっつーの。
「疲れた?」
「おかげさまで」
リビングをゴロゴロ転がりながら部屋の中を見回す。
いいなぁ。
広いなぁ、部屋。
一人暮らしでこの広さって。
金持ちか、こいつ。
イケメンで、金持ちで、って、絶対女居るな。美人の。
まあ性格はクソ鬼悪魔だけど、世の中顔と金だからな。
「ねえ、彼女居んの?」
「ん?気になんの?」
床に寝転んだまま頭だけ奴の方へ向けると、余裕の笑みで予想通りの返答が返ってきた。
「全然」
私は即答すると、ゴロンと寝返りを打った。
「随分くつろいでんな」
「疲れたんだもん」
あんたのせいでな。
日が差し込む窓際をキープした私は、その心地良さに目を閉じた。
眠たい...。
目を擦りながら膝を抱え込むように丸々と、また後ろから「ふはっ」と笑い声が聞こえてきた。
「なに」
「猫か、お前は」
なにそれ。
「人間」
棒読みで答えて私はまた目を閉じた。
