「ハアッ、ハアッ、ハアッ。」
走り終わったトラックから中のゾーンに戻るまで俺は上しか見えていなかった。そうか、暑さが完全にオレの頭を支配している。この暑さはいつぶりかああそうか、あの時以来だ。

「ナイスタイム」
計測の麻生(アソウ)からタオルを渡された。
夏の強い日差しが麻生の影に一瞬隠れるしかし、息が粗いクリストファーは涼しい影に一瞬癒されただけだった。

「ふうっ、ハアッ、、、、、ありがとう。」
ついつい腰をついてしまった。
金髪の生徒会長は長身を起こし計測後の一息をついた。
「良かったよクリストファー、前より4秒短い。自己ベストだね。」
「そうか。。。」
まだ少し息が上がっているがまあいい。
麻生の屈託ない笑顔に、息を落ち着けて会話をしようと、場所を少し離れてみる。
グラデーションの深い青い目と長いまつげの上の額から流れる美しい
汗を爽やかに拭き取った。
タオルは麻生が受け取った。
「麻生、まだ時間は大丈夫だったか。」
「まだ大丈夫だよクリス。これがラストだからまだ総会には間に合う。」

一口ペットボトルの水を口に含みたいところだが、頭を水で濡らした方が全てが早い気がする。
思い切り蛇口を捻った。

「そうか」

バシャッバシャッバシャッバシャッ
虹の水しぶきと夏の塩素の臭いが気持ちいい。

「オーディエンス多いけど、間に合うか。」

「余裕だよ、大会が終わってから完全に、新来まちだね。彼女達。」

「なにもしてないよ。お前待ちじゃないのかグリーンヘッド(緑の髪)たがらな。幸せの象徴だからな。」
新来クリストファーは麻生をからかった。

「もう珍しくないよ、てか完全にクリスまちだろ、以外に考えられない。あんなに来るんだから。」

「そうか。」
タオルは柔らかい。麻生の笑顔は恐ろしく眩しい。そして、さっきから声援が大きい女子高生やお姉さん達は立ちっぱなしで暑くないのだろうか。
少し振り向いてみると、ちゃんと木陰に並んでいる事はわかった。なるほど、心得ているんだな。この暑い夏の過ごし方を。日に焼けた茶色の学生カバンとリバイバルしたしたなんとかソックスに髪がオレと同じ色だ。

「行こうか、次はもう少しピッチをげたいんだが、上げる場所は決めている、あとで意見をくれ。」

「了解。ふー、、、日陰だー。」
中央渡り廊下下の影を二人で通過する

麻生はわずか3時間程度で汗だくになっていた。