──次の日の朝
私は鏡の前に立っていた。
「よしっ、大丈夫だね!」
昨晩目を冷やしてから寝たため、目は腫れていなかった。
いつものように髪をとかし、制服を着る。
「……この制服も、いつまで着られるんだろうね……」
普通なら、特に何も感じないであろう、いたって普通のブレザー。
無地のネクタイに紺のジャケットというデザイン。
それでも、なぜか、愛着が湧いていた。
前の高校より、いた時間は短いはずなのに、この高校の方が思い出は多い。
前の高校の事を思い出そうとしても、何一つ出てこないのだ。
まぁ、思い出したくもないというのが本音だけど。
この制服、このカバン、この教科書、この部屋……
いつまで使い続けられるのかは分からない。
けど、だから、後悔しないように使っていこうと思う。
いつ使えなくなっても大丈夫なように。


