「良かったのか?」
部屋に向かう途中、咲夜は言った。
心配そうにこちらを向いて。
「うん。……先生たちにはみんなにいうより先に言わなきゃいけなかったしね」
「……そっか」
咲夜は、そう言ったっきり黙っていた。
「ねぇ、咲夜!笑って?まだ時間はあるんだから」
「……そうは言われても、俺だって複雑なんだよ……。お前の病気が治るってのに、素直に喜べねー。寂しいっていう気持ちが勝ってしまうんだ」
知らなかった。
私だけじゃなく、咲夜も不安だったってこと。
「大丈夫。私たちは大丈夫だよ。どこにいたって、どんなに離れていたって……。ね?」
私は咲夜に笑った。
でもきっと、嬉しいとか楽しいっていう笑いじゃない。
私だって寂しいから。
「……そうだな」
咲夜も笑ってくれた。
けどその笑いは、とても寂しそうで、すぐに壊れてしまいそうな儚い笑顔。
切ない顔だった。


