「軽い女」

 ショックだった。大学の最寄り駅であるS駅のホームで入学してから気になっていた男の子が、同期の男の子と私のほうを見て話していたから。
 
 私はただ、英語科の男の子と話していただけなのに……。

 私が誰と話していようが、君には関係ないよね。別に誰と話していたっていいじゃん。

 でも、それがフラれた翌日だったということが、まずかったかな?? とは今になって思うよ。勉強もスポーツも人並み(もしくは、それ以下)に出来る。他人より特別これが優れていることもない。

 
 大学に入学して、同じ国際文化学科に在籍。初めは、学科内で1番カッコいい、タイプと思った。同じゼミに所属が決まったときは嬉しかった。

 ゼミ以外にも、履修科目が重なったときは、妙にソワソワしていた。私は前のほうに座って、君は後ろのほうだったから、授業中に何回も後ろを見て探したこともあった。

 あっ……でも1度だけ、隣の席になったこともあったよね。寝ている君に聞こえるか聞こえないかくらいの声で「好き」と呟いたことも。

 そんなこんなで、1ヶ月半くらいたった、ある水曜日のこと。お昼休みに君の元へ行って、手紙で告白。結果はダメだった。でもS駅の駐車場内にとまっていた学バスの車内でフラれた。その時間に、バスを利用する学生たちが少なかったことが不幸中の幸いだったけど。でも……でもっ、私が見かける限り、君だって違う女の子と話している癖に。なんか悔しい。その時、私は誓った。


 -君よりも素敵な男の子と付き合うー


 君だけでなく、私をからかって楽しんだ奴らよりも、素敵な男の子と付き合って後悔させようって。

 中学生の頃の私は、同期や1歳上の先輩から「付き合って」だの「好き」と、廊下や玄関で言われた。驚くというよりも返事がでてこなくて固まった私を見て「良かったね」と冷やかす子もいた。

 先輩から「好き」と言われた日は、友達に相談しようと思った。友達を待っている時に、別の先輩から「アイツを待っているの?? 」 と聞かれて返事に困って逃げた。

 翌日、その後の話を聞くと別の子にも同じことを言っていたことが判明して、私は難だったのだろうと頭の中で思った。それが強すぎたのか頭が痛くなって、保健室へ。保健室の先生に全部話して休ませてもらった。それ以来、先輩から何も言われることなく平和だった。

 高校受験を間近になった時に、友人が4歳上の大学生を紹介してくれた。中学生から見た大学生は大人って感じ。本命だった公立高校に落ちたときは励まして、すべり止めになるはずだった高校に合格した時は喜んでくれた。

 でも、離任式の後、3年間憧れだった社会科のイケメンの先生(30)と握手したことをメールで報告した。

 「憧れだった先生と……何したと思う??」

 「キスしたの?? それとも、その先??」

 「握手したの」

 その時に、モラルがない人と思った。そこから大学生とは連絡をとらなくなった。


 高校1年生の秋。芸術の時間(書道)だった。先生が翌日の修学旅行の引率の関係で自習に。自習内容を終えて、友達と話しているときのこと。急に後ろから声をかけられ、振り返ると男の子の顔が近付いてきて……。チュッとリップ音が響いた。寸前でとまったけど、周囲の男の子達が冷やかした。何が起きたのかわからなかった。

 それ以来、意識して授業でこんな短歌を詠んだんだよね。

・神無月 あなたが見せた キスの顔 
  強く響いた  私の心に

・白黒の ボール追いかけ 走る君 
  あなたに心 満たされた秋

 
 意識したことが広まった頃に、後悔している姿を見てショックを受けた。罰ゲームだったんだって。何で気付かなかったのかな?? って。

 それで、そういう対象にしか見られてないことに気付いて割り切るようになった。ううん。割り切るしか出来なかったんだ。だから、フッたことを後悔されるためにも、素敵な彼氏を作ろうって。

 
 大学に入学して、「軽い女」と呼ばれてもへこたれる私じゃない。君より勉強でも遊びでも目立つんだ。そして、罰ゲームの対象としてきた奴らも後悔させる!!

 そう決心した後に、地蔵くんと出会って片思いした7ヶ月。あなたは聞いてくれますか。