家を出てすぐ、目の前を黒猫が横切った。



「昨日の…」



「覚えててくれた?」



背後からの声に驚いて振り向く。

昨日の男の人。


こんなすぐにまた会えるなんて予想もしてなかった。

昨日と同じ服装。

ただぼーっとみつめていると、



「今日ははやく帰っておいで」



彼の発言には昨日から驚かされることばかり。

だって、会ったことも見たこともなく、知りもしない人なのに、前から知り合いのような接し方。


なんだか怖くなったわたしは、身構えながら問いかけた。

「誰なんですか」


すっとわたしの横を風がすり抜けた。
のは、ただの気のせいで。


「待ってる」


耳元で囁かれた。
どきっとした。びっくりした。
心臓を脈打つのがはやいのがわかる。


しばらく放心状態だったわたしは、
はっと我にかえると彼はもういなかった。





なんだか本当に怖くなってきたわたしは
走って学校へ向かった。