「ちょっと!」



気づけばわたしは彼を呼び止めていた。
彼は足を止めた。


「あ、あの、名前!名前おしえて!」


なんだか冷静になれなかったわたしは
無意識に名前をきいた。


「ごめん」


そう一言つぶやいて、彼は歩いていってしまった。


何に対しての謝罪なのか、わたしには理解できなくて、その日はずっと、彼のことが頭から離れなかった。