その日の授業はほとんどの時間を、先生の目を盗んで机の下で携帯小説を読んだり、寝てすごした。
それでもノートはしっかりとっておきたくなるのがわたしで、板書だけはしっかりと書き写した。
今朝は先生に、体調大丈夫なのかと心配されたが、ただのサボりだったため、普通に元気。きっと都が上手く話をしておいてくれたのだろう。気がきく都にはいつも感謝でいっぱい。


放課後になると、都がソッコーわたしの元へとんでくる。

「よーし!それではなつみのストーカー退治といきますか!」

都は警察官のように手を頭の位置にもってきて敬礼をした。
もちろん、へなちょこな敬礼だけれど。

わたしたちはすぐに校舎を出た。




「なっつみーなっつみーなっつみーなっつみー」

都はルンルンになりながら下校道を歩く。
イケメンな男を見ることができるっていうことで、興奮しているらしい。
まったく、わかりやすいやつだ。

「イケメンを見れるのがそんなに楽しみなのー?」

わたしがそう聞くと都は少しはっとして、

「そんなことない!まあでも、我が校の男のレベルの低さに飢えてるから、楽しみといえば楽しみかも」

都は私と比べたら顔立ちも整っていて、綺麗系だ。
男たちが狙わないわけがないのに、都はまったくといって興味をしめさないのである。
それはもちろん、都曰くわたしたちが通う青原高校の男子のレベルが低いからだ。
ただ単に都の理想が高すぎるだけである。
都にとって理想の男とはどんな人なんだろう。


「ん?」


もうすぐ家に着くというところで、
都が突然立ち止まった。


「あの変な黒い物体何?」


そこには昨日と今朝見かけた綺麗な毛並みをした黒猫が座っていた。

「あー、最近良く見かける野良猫だよ」

「なんだあ、猫か。爆弾でも置いてあるかと思ったよお。」

その猫はわたしたちに気づき、こちらに近寄ってくる。
わたしたちは立ち尽くしていた。
脚に身体を擦りつけてくる猫は人懐こく可愛かった。

「可愛いなあ」

都は黒い猫の頭を撫でてやると黒い猫はどこかへ去っていった。