何を言われるかワクワクしながら、池宮をじっとみていると、照れくさそうに池宮は目をそらした。さけられてるみたいで、私は嫌だったけど何かすごい事を言うんじゃないかと心待ちにしていた。
その池宮から出た、最初の一言。

"野村が好き"

一瞬、頭が真っ白になって、立っている事もままならなかった。小石に足を滑らせてこけかけた私を、池宮は優しく抱きかかえてくれ。顔がすごく近くて、私は顔が赤くなったのがはっきりと分かった。照れている事がばれたくなかったから、すぐに起き上がって、何事も無かったかのように平然と立っていた。
すると、池宮が低くて、小さな声で…

"何だよ、その反応。こっちは勇気振り絞って言ってんのに、返事は無しかよ。いきなりで悪かったと思ってる。でも、せめてYesか、Noかを教えてくれないか?"

本当にいきなりでびっくりした。私には、彼氏がいる。池宮とは正反対の、優しい彼氏が。でも、今池宮に告白されて、嬉しいと思った自分がいた。池宮は、顔もかっこよくないし、女たらしだけど、いつも私の側で笑っていてくれて、時々見せるあの優しさに実際惹かれる事もあった。今、ここでYesと言うと、彼氏を裏切る事になる。でも、Noと言うと、自分の気持ちに嘘をつく事になる。どちらにせよ、誰かが必ず悲しむ。そう考えると、勝手に口が動いていた。

Yes

自分でも、何故そう言ったのかわからないが、今の彼氏との状況を考えると、正しかったのかもしれない。
その返事を聞いた瞬間、池宮は私を優しくて包み込むように抱きしめてくれた。
とても、暖かくて、懐かしい気持ちになった。
並木道を池宮と2人で手をつないで歩いた。