サンドムーン


15本目の道を曲がると、賑やかな市場が見えて来た。




ラザクは無事路地を抜けた事にほっとして、行き交う人々を観察する。




手には各々買い物袋をぶらせげ、朝食時だからだろうか、何かを食べながら市場を歩いている人が多かった。




ラザクも何か美味しそうなものがあったら買おうと、道沿いに連なっている店を確認していく。




あれからずっとタザの話しは続いていたが、ラザクは完全に聞き流していた。




「俺の親父、砂運びの仕事をしているだろ?


俺も小さい頃からよく手伝わされていたけど、国の周りの砂をひたすら運ぶだけの地味な仕事なんだ。


俺、そんな仕事に就くことになったら、発狂して死んじまう。」




「うん、そうだね。」



もちろん、相槌は適当に打つ。




そんな中、大好物の干し芋を焼き売りしている店を発見した。



タザの話が途中であったが、迷わず駆けて行って注文する。



「干し芋一つ下さい!」




「はいよ、"5サン"ね。」



鞄の中から財布を取り出し、言われた額を支払うと、干し芋が手渡された。



少し炙っているのか、受け取ったものは熱く、焦げ目がついている。



良い匂いだ。



早速頂こうとしたラザクの肩をタザが掴む。




「おい、ラザク。お前人の話聞いてんのか?」




ラザクはきょとん、とした顔で答えた。



「え、タザも食べるのか?」




「……。」




無言のタザから拳が飛んで来る。




ラザクはそれを難なくかわすと、干し芋を頬張った。



やっぱり干し芋はうまい。




「ラザク、お前って奴は…俺が不安な胸の内を語っているというのに、まるで聞いていなかったんだな!」



タザはラザクに掴みかかり、干し芋を奪う。



そして一口食べると、奪ったものをラザクに返し、自分の分を注文するため先程の店へと走って行った。



「なかなか美味いな、これ。」



口いっぱいに干し芋を頬張りながら戻ってきたタザは、満足そうだ。




「だろ?俺、今日の朝飯満足に食えてないから、大好物を見たら我慢出来なくてさ。


それ食べて悩みなんか忘れようぜ!」



ラザクは満面の笑みをみせた。




つられてタザも笑顔になる。




18年間共に過ごしてきた幼馴染の扱い方を、ラザクはよく心得ていた。