ラザクの暮らすヨタ王国は、周りを砂漠で囲まれた孤立国家だ。
しかし国内は非常に豊かで、豊富な水や食料があり、様々な動植物も見られる。
まさにオアシスの様な所だ。
中心部には城が位置し、その周りに住宅街、さらにその周りには畑や家畜小屋、そして一番外側には森が広がっている。
住宅街は国の一割程度の面積しか占めていないが、国民のほとんどがそこで暮らしていた。
そのため建物が密集している場所が多く、現在ラザクとタザが歩いている区域も入り組んでいて迷いやすい。
黄土色の泥で塗られた家が何軒も建ち並び、細い路地がいくつも枝分かれしている。
「俺、不安で仕方がないんだ。」
出発してから黙々と歩いていたタザが、不意に口を開いた。
とても緊張した面持ちで、前方を見つめている。
「ああ、俺もだよ。
気を抜いたら、すぐに迷子になりそうだよな。」
ラザクが同意すると、タザは
「違う。」
と一言否定して話しを続けた。
「太陽の儀で、色々な事が決まっちまうんだろう?
仕事も、身分も……さらには結婚相手まで!
何か悪い方にばっかり考えちまってさ。
俺の結婚相手、国一番のブスだったらどうしよう。」
「……!」
ラザクは吹き出しそうになるのを何とか堪えて言う。
「……結婚するしかないんじゃないか?」
真剣な顔で何を考えているかと思えば、結婚相手の見た目だったとは……笑いが込み上げて来る。
「そうだよな。そうするしかないんだよな…。」
タザは頭を抱えて、うなだれた。
太陽の儀で決められる事は絶対だ。
例え結婚相手が国一番のブスであったとしても、逃げ道はない。
「そんなこと今から考えたって仕方ないだろ?
なるようにしかならない。あとはお日様頼みさ。」
ラザク自身、結婚相手や職業は気にならなくもないが、考えた所でどうにかなることではないことはわかっていたため、その辺りは割り切っていた。
しかしタザはそうではないらしい。
うらめしそうにこちらを見ながら呟く。
「皆が皆、お前みたいにあっさり割り切れると思うなよ。」
はあ……、と溜息をついて空を見上げ、再び苦悩を話し始めた。
これ以上聞いていると長くなりそうなので、ラザクは路地を抜けることに集中する。

