「なかなか似合ってるじゃないか。


でもあんまり自分に見惚れるんじゃないよ。」




振り返ると、母が部屋の入口に立っていた。



鏡をまじまじと見つめるラザクの姿がよほど面白かったのか、口元が堪え切れない笑いで歪んでいる。




「な、なんだよ、この国の人間の特徴に合わせて決められた礼服なんだから、似合って当然だろ?


そ、それより、さっき朝ご飯片付けられて、俺は腹が減ってるんだからな!」



ラザクは弁解を図るが、恥ずかしさのあまり自分でも何を言っているか分からなくなった。




母はついに大きな声で笑い出す。





その時、外からラザクを呼ぶ声が聞こえた。



「おーい、ラザクー!一緒に聖堂まで行こうぜー!」




この声はタザだ。



窓の外を見ると、タザがこちらに向かって手を振っている。




助かった。



ラザクは一刻も早くこの場を後にしたかった。



「今行く!」



手短に返事をすると、まだ笑いが収まらない母に


「行ってきます!」


とだけ言って部屋を出る。




「気を付けて行きなよ。」



母の送り出しの言葉を背に、ラザクは慌ただしく玄関を出た。