部屋に戻ったラザクは、今日の儀式で必要な物を確認していく。



ロウソク、マッチ、皮の手袋、身分証明書(※羊皮に生年月日、両親の名前・職業等が記載されているもの)……昨日母に教わった通りの物を、鞄に入れていった。



最後に僅かながらの貯金も入れ、鞄を閉じる。




そして、儀式で着る礼服へと目をやった。



礼服は国によって定められており、時と場合、または身分等によって変わってくる。



太陽の儀においては白いローブとされていて、これは各家庭で手作りしなければならない。



その家庭が、最低限の生活水準を保てているかを見極めるためである。



ローブに使う布はなかなか高価なもので、その他刺繍に使う金の糸等もかなり値が張る。



そのため礼服作成はかなり大変なものとなるが、太陽の儀を迎えるまでに礼服を作れない家庭の子供は、儀式を受けさせてもらえない、つまりは国民として認められなくなってしまうのだ。




ましてラザクの家庭は母子家庭。



こうしてローブが出来上がっている事が奇跡のようであり、母がどれほど苦労をしたのか、想像するだけでも頭が上がらなくなる。




とはいえ母に対して出るのは憎まれ口ばかりであり、今更恥ずかしくて感謝の言葉など言えないのだが。





ラザクは礼服を手に取りそのまま羽織ると、部屋の隅の鏡の前に立った。



ボタンを掛けながら鏡の中を見る。




浅黒い肌とは対照的な白色の生地が、ラザクの全体像を引き立てていた。



加えて裾の方に刺繍された金色の古代文字や、胸元に施された国の紋章である太陽は、くせ毛の金髪と共に輝いて、きらびやかな印象を与える。



空のような色をしている瞳は唯一異色で目立っており、良いアクセントとなっていた。




これまで自分の外見はあまり好きではなかったが、なんだか見違えるようだ。



孤児にも衣装(※馬子にも衣装)とはこのことだな、とラザクは一人で納得する。