台所に入ると、野菜スープと焼いたパンの良い香りがしていた。



机の上にはそれらに加え、お日さま焼き(※目玉焼き)やサラダも置かれている。




「今日はやけに豪勢だな。」



ラザクは、パンにお日さま焼きをのせて頬張った。




「当たり前じゃないか。今日はあんたにとって特別な日だからね。」



母は野菜スープをすすり、一息つく。



「あんたももう、18歳になるんだねえ。


色々と大変だったけど、こうして息子の晴れ姿を見れるんだ。


苦労した甲斐もあったさ。


本当に…ここまで育ってくれてありがとう。」




「……。」



ラザクはどう答えて良いか分からず、言葉に詰まる。



普段は憎まれ口ばかりの母に、感謝の言葉を貰ったのは初めてだった。




しばらく沈黙が続く。





母が時計を見て、残りのスープを一気に飲み干した。



「あまり時間がないよ。早く持ち物の準備でもしな。」



そして机に置かれていた皿を片付け始めた。




「あれ、母さん、俺まだ食べ終わってな…。」




「これ以上食べてたら儀式に遅れちまうよ!」




皿はどんどん片付けられていく。




仕方なく、ラザクは残りのパンとサラダを急いで口に入れると、静かに席を立った。