サンドムーン


タザの足取りが軽い中広場に到着すると、ラザクは改めてその美しさに驚いた。



まず目に入るのは、中央に生えた大きな木だ。



どっしりと構えた幹からは広場を包み込むようにして枝が広がっており、葉が茂っている。



その木の下には、椅子が幾つか置かれていた。



おそらく近くの住民が、普段はあの椅子に座って雑談等をするのだろう。



一番外側には花壇があり、広場を囲うようにして色とりどりの花が植えられいる。



そして城へと続く道には、小さな石が所狭しと埋め込まれており、脇には黄色の花が植えられていた。




「おい、お偉いさんが出て来たぜ。」



広場を夢中で眺めていたラザクに、タザが耳打ちをする。




城の外壁の隅にある扉から何人もの兵と一緒に、紫色のローブを来た老人が出て来るのが見えた。



外壁の隣にある聖堂と思しき建物に向かって、老人はゆっくり歩いて行くと、袖から鍵を取り出して扉を開ける。




それを見届けた後、門兵の一人が国中に響き渡るのではないかと思う声で言った。



「太陽の儀を受ける者達よ!


今日この日より、君達はヨタ王国の成人者として、仕事、そして家庭を与えられる!


ヨタ王国を担う一人となることに誇りを持ち、これからの国の繁栄に尽力を注いでもらいたい!


身分証明書の用意が出来た者から聖堂まで一列に並び、中へ入ったら静かに席につくように!」



そして門兵は聖堂へ向かって歩き出した。



城から出て来た兵士達は、聖堂への道の脇に花を踏まないようにして立つ。




「かっこいい…。」



タザが目を輝かせながら呟いた。




「俺、兵士になりたい。」




ラザクは鞄から取り出した身分証明書を落としそうになる。



「タザ、念のため聞くけどさ、まさか兵士が格好良く演説するだけの仕事、なんて思っていないよな?」




「もちろんだ!国を守り、家族を守る。


そして、いつかああして演説する!」



タザは力強く答えた。




「そうか、がんばれ。


その職に就ければ、の話だけどな。」



ラザクはそれ以上何も言わず、列に加わる。




タザも続いて列に並ぶが、視線はずっと兵士達に釘付けだった。