昔々あるところに、太陽の下で暮らす「太陽の民」と月の下で暮らす「月の民」がおりました。



太陽の民は天と地の恵みを、月の民は知と美の恵みを与えられていました。



人々はお互いに与えられたものを共有し、豊かに暮らしておりました。




しかしある時、一人の民が言いました。


「どちらの恵みが、より必要なのだろうか。」



太陽の民は天と地の恵みに決まっている、と言いました。



月の民は知と美の恵みでしょう、と言いました。



そして、太陽の民と月の民の間で争いが起きました。




太陽の民は月の民に、一切の天と地の恵みを分け与えなくなりました。



月の民は太陽の民に、一切の知と美の恵みを分け与えなくなりました。






この様子を見ていた太陽と月は、酷く悲しみました。



太陽は太陽の民に言いました。



「汝らはこれより、我が光の元でのみ暮らしなさい。我の出でる時より目を覚まし、我の入る時に眠りにつきなさい。」



そして太陽の民に魔法をかけました。




月は月の民に言いました。



「汝らはこれより、我が光の元でのみ暮らしなさい。我が輝く時より目を覚まし、我が消える時に眠りにつきなさい。」



そして月の民に魔法をかけました。





これにより太陽の民と月の民は、お互いに干渉することが出来なくなりました。





太陽と月は言いました。



「互いが互いを認め、思いやるようになった時、その魔法は解けるであろう。」




こうして太陽と月は同じ時間を交代で照らすようになり、太陽の民と月の民はそれぞれの光の下でのみ暮らすようになりました。