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フジヤマの運転する車は、丘の上の公園で停車した。
住宅街の中にある大きな公園で駐車スペースも多く、この辺りに住む人の癒しの場所だ。
「……フジヤマさぁ、よくその運転で捕まらないよね……」
「実は俺、この国の一番偉い人の孫だからなっ」
「あー、はいはいそうですかー」
「棒読みすんなよ」
ぐったりとする私に、フジヤマはニシシッと笑う。
うぅ……車酔いっていうか、めまいがする……。
「なぁなぁ咲良」
「なーにー……」
「お前さ、YUKIのことどう思ってる? あ、雪村 秀一の方のYUKIな」
「……フジヤマも、YUKIのこと『YUKI』って呼ぶんだ?」
「そりゃあ、アイツとの出会いはチャットだったから昔はそう呼んでたよ。
で、咲良はYUKIのことどう思ってんの?」
どう、って……。
「……メチャクチャ好き。 性悪な人だなって思うけど、それでも好きだよ」
「ん」
「……だけど、恋人とかそういうのは望んでない。
友達としてそばに居られればそれでいいの。 色々な話をして笑い合えることが、私の幸せだから」
フジヤマにニコッと笑いかける。
……だけどフジヤマは、座席を少し倒して車の天井部分をぼんやりと見ているだけだった。
ほんの少しだけ、無言の時間が訪れる。
「……YUKIもさ、お前と同じようなこと言ってたんだ」
ぽつり、フジヤマが言う。
「アイツは『サクラが幸せならそれでいい』って言ってた。
……今のお前とおんなじで、友達としてそばに居られりゃそれでいいって思ってるんだよ」



