「咲良ちゃん、そろそろお風呂行っておいでー?」
「……へっ!?」
「だって、今日泊まるでしょ?」
……いやいやいやっ、突然何を言ってるんですかユキ姉っ!!
と、泊まるって、私がこのお家にですかっ!?
「あのっ、私は泊まらないよっ……!?」
「え、どうして? 私とお話するのイヤ?」
「イヤじゃないよっ!! 全然イヤじゃないですっ!! でも突然お泊まりとか、そんなのあり得ないって!!」
「サクラはユージの家にお泊まりだよー? だから、こっちの咲良ちゃんもウチにお泊まり!!」
な、なんでそうなるんですかぁ……。
「ていうか、桜子ちゃんと私とじゃ全然立場が違うからっ」
「いいじゃない、友達の家に泊まるって言えば。
あ、お家の人には私が電話してあげるっ!! そうすれば『女の子の家だー』って安心でしょ? よしっ、決まりっ!!」
「ちょ、ちょっとユキ姉っ……」
「携帯ゲット!!」
テーブルの隅に無防備に置いていた携帯をあっという間に取ったユキ姉の手により、あっという間にお母さんへと電話が繋がった。
うぅ……ロックかけておくんだった……。
「あ、もしもし、突然お電話してしまって申し訳ありません。
私、咲良ちゃんの友達の沢口 由紀子と言います」
にこやかに話すユキ姉。
そして、電話口から漏れ聞こえるお母さんの声。
……お母さん、メチャクチャ嬉しそうな声で『わかりましたー』とか言ってるしね。
そんなにお父さんとラブラブしたいかこの野郎っ。
「じゃあ、何かあったら連絡しますのでー。 はい、失礼しまーす」
……可愛らしい顔でピースするユキ姉が、悪魔に見えた瞬間だった。



