YUKIは、二階建ての家を見上げながら微笑んでいた。
見上げる先にある部屋には明かりが灯っている。 多分、あそこがお姉さんの部屋だ。
「本当は、咲良にユキ姉のことを話したかったんだ。
『退院したんだ』って言って、『ユキ姉が咲良に会いたがってたよ』って話したかった。
でも俺、咲良の連絡先知らなかったし……学校でも全然、会えなかったから」
「ん……」
……『会えなかった』とYUKIは言うけれど、それは多分、違うよね。
だって、同じ学校なんだもん。
会おうと思えば昇降口で待ったり、校門で待ったりすれば会えるはずだから。
だけどYUKIは『会えなかった』と言った。
でも本当は、私を避けていたんだと思う。
私が『好き』と言ってしまったから……YUKIとの関係を、私が壊してしまったから……。
「……もう入ろっか。 やっぱり、外は冷えるから」
「ん……そだね」
優しく笑うYUKIに笑顔を返し、歩き出した彼の背中を見つめる。
……寂しそうだな、と思う。
フジヤマと話してた時は楽しそうだったし、私にも笑顔を見せてくれるけど。
でもやっぱり、その背中は寂しそう。
YUKIが今 何を思っているのか、私には全然わからなかった。



