「親は居ねーけど、ユキは居るよ」
「え……?」
フジヤマがニコッと笑う。
あ……無精ひげのくせに、なんか爽やか……。
「まっ、話の続きは家ん中っつーことで!! さぁ降りた降りたっ。 俺は車を車庫にインだっ」
「あっ……うん……」
フジヤマに促されるまま車を降りて、YUKIの家を見つめる。
……フジヤマの言ってた『ユキ』って、お姉さんのことだよね。
そっか……退院してたんだ……。
「お姉さん、いつ退院を?」
「咲良と保健室で話した日の翌日」
「あ……そっか……」
……あの日の翌日にお姉さんは退院したんだ。
うぅ……なんか、保健室でのことを思い出しちゃった。
聞かなきゃよかったかも……。
「ユキ姉の入院してた病院に行くには、あの駅からバスに乗るのが一番楽なんだ」
「……え?」
「咲良の利用してる駅前のバス停。 あそこは病院経由のバスが出てるんだよ」
……あ、だからYUKIは私と同じ駅で降りて、すぐにバスに……。
そっか。 YUKIはいつもお姉さんの病院に行ってたんだ。
どこか寂しそうな顔をしていたのは、お姉さんのことを心配していたからかな……。
きっと、お姉さんの前ではYUKIは微笑んでいるはず……笑顔以外は、見せないはず……。
だから一人の時に、あんな顔をしてしまっていたんだ。
そう思いながら、隣に立つYUKIを見つめる。



