YUKI>俺は全然気にしないけど、咲良は気になるんだ?
咲良>そりゃあ、友達にからかわれたり……。
YUKI>あぁ、なるほど
と言ったところで、雪村さんの言葉が止まる。
私もどう返せばいいかわからなくて、そのまま無言で画面を見つめていた。
そして、1分くらい経った時──、
YUKI>じゃあ『YUKI』って呼んで。 雪村のユキなら、全然変じゃないだろ?
──……と、画面に映し出された。
「……YUKI、か」
うん、それなら確かに変じゃないかも。
イトちゃんも名字の『糸井』からとってイトちゃんだもんね。
うんうん、全然オッケーだ。
咲良>それなら大丈夫だと思います。 ので、これからはYUKIって呼びますね
YUKI>それはいいけど、敬語は禁止
咲良>あ、了解ですっ
雪村さんのことを、これからはYUKIと呼ぶ。
そして、敬語は禁止。
……実際に目の前に雪村さんが居たら、多分敬語で話しちゃうんだろうなぁ……。
で、また『敬語禁止』って言われるのが容易に想像出来る。
それで、なかなか上手く喋れない私は、顔が赤くなってしまって……雪村さんはそれを見て、きっとクスクスと笑う。
……うわー、あり得る。 ていうかむしろ絶対それだ。
「……リアルでもタメ口だなんて、言わなきゃよかった……」
後悔しても、後の祭り。
なんでもないようなことを話してくる雪村さんに、私は敬語を使わないよう一生懸命に言葉を返す。
でもそんな私の状態に気付いているらしい雪村さんは、『頑張ってするようなことじゃないだろw』と笑っている。
……そんな状態のまま、私たちはその日遅くまでチャットを続けた。



