約束した……というか、一方的に言われただけだけど。
現にこうやって、雪村さんは2チャットで私を待っている。
……私が入室しなかったら、雪村さんはずっとずっと待つことになるんだよね。
……そんな状態で放置するなんて、絶対無理……。
「うー……仕方ない……」
意を決して、入室ボタンを押す。
>>咲良さんが入室しました。
画面にそう表示された瞬間、ドキドキが最高潮に達する──。
YUKI>俺の知ってる咲良?
「……っ……」
わっ……『俺の知ってる咲良?』って言ってきた……!!
咲良>あの、私の知ってる雪村さんですか?
YUKI>うん、雪村 秀一
うわわっ、名乗った!!
2チャットだから他の人に見られる心配はないけど、いきなり名乗っちゃったよっ。
ほんとにほんとに、雪村さんだ……。
YUKI>よかった、会えないかと思ってた。
YUKI>6時から居たのに全然来ないから、暇すぎて死ぬかと思ったよ(笑)
続けざまに文字を打つ雪村さん。
速いよっ……打つの速すぎて全然追いつかないっ……。
咲良>ゴメンナサイ、何時に行けばいいかわからなくて
YUKI>大丈夫、高校生ルーム8で暇つぶししてたから
YUKI>基本高校生ルーム8に居るから、何かあったらそこ行って声かけて
……だから、速いってばっ。
私が1文字打つ間に、この人は10文字くらい
打ってるんじゃなかろうか……。
咲良>あの、私打つの遅いので、もっとのんびりお願いします
たまらずそう書くと、雪村さんは『おk』とだけ返してきた。
……いや、それだけっていうのも、どうすればいいかわからないんですけど……。



