「……次、俺 降りるけど咲良は?」
「あっ……私も、次です……」
「そっか」
短い言葉を交わしてるうちに、電車はホームへと滑り込む。
私がいつも利用している駅で雪村さんも降りるらしい。
ドアが開き、私たちはそれぞれに歩き出す。
改札を抜けたあと、雪村さんはすぐ近くのバス停へと並んだ。
「じゃあ、またそのうち。 ていうか、明日も会うかも」
「え、明日も……?」
どうして明日も? と聞こうと思ったけれど、バスが来たからそれ以上は聞くことが出来なかった。
雪村さんはひらひらと手を振ってからバスに乗り込み、座席に着いたあともまた、私に手を振って微笑んだ。
だから私も手を振って、彼を見送る。
ドアが閉まり、バスがゆっくりと走り出す。
……走り出した直後、彼はまた寂しそうな顔で遠くを見つめだした。
私の存在なんか、もうすっかり忘れているみたい。
そんな姿にチクリと胸が痛みながらも、私は彼の乗ったバスが見えなくなるまで、小さく手を振り続けた。



