じゃあ、さっきのYUKIの言葉も……『どうしようもないくらいに、好きなんだ』って言葉も、私に向けられたものじゃないのかもしれない……。
「咲良が俺の家に泊まって、俺の部屋で寝てしまった時……──」
「YUKI、待って……」
……『大丈夫』って言ったけれど、やっぱり大丈夫なんかじゃなかった。
胸が痛くて、涙が溢れそうで、どうしようもなくツラい。
私、全然大丈夫なんかじゃないよ……。
「……ゴメン。 私、もうこれ以上は……」
「──……咲良が寝てしまった時、俺は咲良を咲良として見てた」
「……え?」
私を、私として……?
「ヒドい言い方になるけれど、その時 初めて咲良を一人の女として意識した」
……確かに、ヒドい言い方……。
でも……桜子ちゃんの代わりとしてじゃなくて、私自身を見てくれたの……?
じゃあ『好き』って言葉は……あれは、私のことを……?
「寝てる咲良を見て凄くドキドキした。 『可愛いな』って思った。 そして、『好きだ』って気付いた。
今までは咲良に桜子を重ねて見てたけど……でも俺は、『咲良が好きなんだ』ってわかったんだよ。
咲良を抱き締めて髪を撫でたい。 頬に触れたい。 キスをしたい。 ……色々なことを思ったよ。
……だけど、それを咲良に伝えることは出来なかった」
YUKIはまた、ゆっくりと空を見つめた。
「俺は咲良の気持ちを知りながらも、それを利用して毎日を過ごしてた。
自分の想いを優先して、咲良の想いを無下に扱ってきた。
そんな俺が、『咲良が好きだって気付いた』なんて言えるわけがないだろ?」
「……」
「咲良に桜子を重ねて見てたのは事実。 そう扱ってたのも事実。傷つけてきたのも事実。
だけど、咲良が好き。じゃあ付き合おう。って……そんな自分勝手なことが言えるわけがない。
だから俺は……俺は何も言わずに過ごしていこうって思ったんだ」



