ゆっくりと目を閉じて、健二さんの体を抱き締め返す。
健二さんの体はあったかくて、優しくて、とても安心出来る。
このままこうやって過ごすことが、私の幸せ──?
と、考えている時だった。
♪~♪~♪~
健二さんのポケットの中から携帯の着信音が聞こえてきて、健二さんは片腕で私を抱き締めたまま、もう片方の手で電話を耳にあてた。
「もしもし、雪村?」
「……っ……」
YUKIからの電話っ……?
『咲良と一緒?』
「うん、一緒」
……抱き締められてる状態だし雑音もないから、電話の向こうのYUKIの声が鮮明に聞こえてくる。
『電話 代わってくれる?』
「何か、あった?」
何も知らないかのようにYUKIに問う健二さん。
どうして、そんな風に……。
『……俺、あの子にヒドいこと言ったんだ』
……YUKIが、ポツリと言う。
『宇田川と付き合えばって言って、そうすれば幸せになれるよって、言ったんだよ』
「いやいや、それってヒドいこと? ていうか俺に失礼じゃない?」
『ヒドいことだよ。 本当に、ヒドいことだ』
……さっきまで鮮明に聞こえていた声が、なんだか聞き取りにくくなってきている。
多分、YUKIの声がさっきよりも小さくなったせい……。
『俺は…が……』
……携帯を耳にあてている健二さんにはハッキリと聞こえたと思うけれど、私にはよく聞こえなかった。



