「じゃあ俺が吊革掴むから、あさひちゃん俺に掴まっていいよー?」
「私は吊革に届くから必要ありません。 ていうか、やっぱり自分で届くじゃないですかっ」
YUKIと桜子ちゃんみたいにしてみたい願望はあるけれど、多分あんな風にすることなんて一生ない。
だって、自分で吊革に届いちゃうんだもん。
男の子に支えてもらう必要がないんだもん。
……悲しいけれど、これが現実。
ハァ……なんか、むなしい……。
「宇田川」
今まで黙って聞いていたYUKIが、ニコッと笑った。
……いや、コレは昨日と同じ、あのこわーい満面の笑み……。
「俺が支えてあげるよ?」
……声だけ聞いてるとメッチャ優しいけど、その笑顔、やっぱり怖いです……。
「雪村、その顔メッチャ怖いっ」
うわっ……健二さんってば、けらけら笑いながら言葉を返してる……。
一方のYUKIは、健二さんの頭をバシッと1発叩いたあとはいつものYUKIに戻った。
『アホなことやらすな』とだけ言い、その後は無言。
……結局、電車の中ではYUKIとほとんど話せなかった。
それもこれも、近くに居る健二さんのせい……。
……昨日の電話での話はなんだったんだ。
そんなことを思いながら、私は一人、小さく小さく息を吐き出した。



