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翌朝。
いつもと同じように朝の準備を終え、いつもと同じ電車の同じ場所に乗り込む。
「おはよう、YUKI」
「おはよ」
ニコッと笑うYUKIが私を迎えてくれて、私はYUKIの隣に立って吊革を掴む。
二人で一緒に居られる、ささやかだけど幸せな時間。
……だったんだけど。
「あーさーひーちゃんっ。 おはよー」
「け、健二さんっ……お、おはようございますっ……」
……少し離れたところに居たらしい健二さんが、ずんずんと近づいてきた。
で、何故か私にピッタリと寄り添う形に……。
「……あの、近すぎません……?」
「だって俺、吊革に手ぇ届かないんだもん。
だからあさひちゃんを支えにして立つ。 うん、いい考えっ」
「全然いい考えじゃないと思います……」
……ていうか、健二さんってYUKIとほとんど身長変わらないじゃん。
つまりは、私ともほとんど変わらないってことだけど……。
とにかく、ほとんど同じ身長なんだから吊革が
届かないなんてことはない。
少し高くなってる場所でも余裕で届くと思う。
なのに、なんで私の腕を掴んで立ってるんだ……。
「……あのー、普通は吊革掴んだ男の子に女の子が寄り添うと思います。 これって絶対逆ですよ」
YUKIと桜子ちゃんはそうだった。
電車内で私が誤ってキスしてしまったあと……YUKIは吊革の届かない桜子ちゃんを守るように手を繋いで身を寄せていた。
ああいうのが、普通だ。



