「大丈夫?」

「あっ……ありがとっ……」

「うん」




ゆっくりと体が解放され、YUKIは何事もなかったかのように微笑んだ。




「……もしかしてYUKIは、急ブレーキがかかることを知ってたの……?」




YUKIは運転士さんを見ていた。 つまり、その先の景色も見ていた……はず。

踏切が近づいてきた時、直前横断する人を見たからこうなることを予測して……それで、私が転ばないようにと抱き締めた……?





「まぁ、ここまでの状態になるとは思ってなかったけどね」




ニコッと笑ったYUKIは、いつものYUKIと変わらなくて。

私の頭を優しく撫でながら、小さく小さく言葉を放った。





「咲良が無事でよかった」




その言葉のあと、YUKIはまた景色を眺め始めた。





……ズルいよ、YUKI。


さっきまでは敬語使ってて、あんなに怖い笑顔を見せてたくせにさ。

急ブレーキがかかるってわかった瞬間に私を抱き締めて、守って、微笑んで。


『咲良が無事でよかった』なんて、そんな風に言うのはズルい。






……好きって気持ちが抑えられなくなるじゃん。

私はずっと『友達でいい』って思ってたし、今のYUKIとの関係に満足していた。


なのに、そんな風に言って微笑むなんてさ……そんなのズルいよ、YUKI。



私の想いを知っていて、そして『応えられない』と言ったのはYUKIでしょう?

だったらどうして、私に優しくするの……?