「ほら、しっかりしてっ!!」
健二さんの鼻を押さえながら、もう一方の手で肩を叩き続ける。
私が叩くのをやめたらこの人はまた寝てしまう。 そう思ったからの行動だ。
「あー……どうも、お世話さまです」
「いいから、ほらっ。 しっかり座っててくださいっ」
「おー」
相変わらずぼんやりとしているけれど、なんとかちゃんとイスに座ってるし、ティッシュも自分で持って押さえてくれている。
ハァ……疲れた。
でも、あとはこの人が寝ないように見とけばいいだけだねっ。
よし、イトちゃんや先生が戻ってくるまで頑張ろうっ!!
「アリガトゴザイマス、朝比奈 咲良サン」
「なんで片言なんですか。 ……って、あれ? 私、自分の名前言いましたっけ?」
「イトっちが言ってた」
「あ、それで。 でもどうして私の名字が『朝比奈』だって知ってたんですか?」
そう聞いた私に、健二さんは微かな笑みを浮かべた。
「そりゃあイトっちから色々聞いてるし、うちのお兄さんからも聞いてたから」
「あ、そう……ですよね」
だよね。
イトちゃんと宇田川 翔さんが幼なじみってことは、当然健二さんとも幼なじみなわけで。
結構親しげな感じだから、私の話を聞いてない方がおかしいのかも。
私は全然、健二さんのことは聞いてなかったけどね。
「あと、雪村 秀一からも色々聞いてます」
「……えっ?」
YUKIから、私のことをっ……!?



